ここは、高知県安芸市入河内にあるゆずの村。
11月の頭には、全体的に青みが残っていたゆず。

それからしばらく日が経って、ぐんと冷え込むようになった今では。
そこかしこが黄色く色づき。
あっちこっちから、チョキンチョキンと鋏の音が聞こえてきます。

この村に住む仲良しのおばあちゃんが、言いました。
“今日はねぇ、カシがわろうちょったきひらいにいっちょったがよ”
それを聞いた僕は、きょとんとして首をかしげました。
~ カシは、樫のことだろうなぁ。
わろうた?
ひらいにいっちょった? ~
チンプンカンプンなおいら。
それを見たおばあちゃんは、にっこり微笑みながら言いました。
“カシがわろうたかと思ってひらいにいっちょったがよ~”
えー?
なんだろなんだろ。
“カシの実が割れたかと思うて、拾いにいっちょったが♪”
とにっこり笑っておばあちゃんがもう一度。
そして、手元のカシのたくさん入った容器を見せてくれました。

これは、冷え込んできて地面にポツポツ落ちたカシの実を拾い集めたもの。
落ちた実の中でも、割れたものだけを拾う。
というのは、集めた実を割って中身だけ使うから…だと僕は思った。
そしたらどうやらそれだけじゃないらしい。
実が弾けたということは、それだけ実が熟しているということ。
そういう実だけを集めて使うんだって。
何に使うかと言うと、おばあちゃん曰く“カシ切り”を作るため。
なんだろうとよくよく伺ってみると。
カシ豆腐とも言うらしい。
カシの殻を割って、中の実を出し、茶色い部分を削り。
水に入れてアクを抜き。
それをミキサーにかけて、塩を加えて…
と長い長い手順をかけて、お豆腐を作るんだって。
できたカシ切りは、ぬたで食べるそう。
季節を感じられる味がここにもありました。
見たことも聞いたこともない、新しい世界を知れるとき。
しかもそれが、自分の身近にあるものを使った知恵だったとき。
わくわく、わくわくします。
最近になって、ぐーんと冷え込んできた。
その冷え込みを、寒いと感じるだけでなく。
そろそろカシがわらってきたかな~と感じるおばあちゃんの静かな勘。
自然と共に生きるおばあちゃんの暮らしには。
隠れたおもしろさがたっくさんあります。
スポンサーサイト