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野うさぎ ぴょんの物語

ここまでは、こちらから。


野うさぎ ぴょん





隣山への道を、ぴょんは跳ねながら進みました。

ちょっと進んでは立ち止まり、あたりを見渡します。

おめめをきょろきょろ。おみみをぴくぴく。おはなをくんくん。


どこでどんな怖いけものに出会うか分からないから、決して気を休めることはできません。

ちっちゃな物音にも、びくびくしながら、おっかなびっくり進むのです。

お山の中では、用心するに越したことはないですものね。



こうしてゆるやかな下り坂を抜けると、雑木林を抜けて杉林に入りました。

ここからが、ぴょんの大好物の野いちごの葉っぱが生える場所なのです。


野いちごの実は、ヒヨドリやメジロといった鳥さんたちの大好物。

真っ赤に実った実は、みんながわれ先にとついばみます。

でも、たわわに実った実にぴょんは目もくれません。


彼がすきなのは、その野いちごの葉っぱ。

それも、葉っぱの付け根の茎の部分しか食べません。

そこはやわらかくてほんのり甘く。

これが野ウサギは大好物なのです。



ぴょんのお目当てはこの茎なのですが、どうしたことでしょう。

この辺りまで来たら、少しずついちごが生えているはずなのに。

あたり一面きれいに刈り取られてしまって、ちっとも生えていません。

きっと、山の持ち主が下草を刈り取ってしまったのでしょう。


ここまで来ても、おあずけ。

早くご飯にありつきたいなぁ。

そうつぶやきながら、ぐぅぐぅ鳴るお腹をさすってぴょんは道を先へ進みました。



ひょいと顔をあげると。

なんだかおかしなことに気づきました。

道の隣に生えるアオキの葉っぱが、枝を残してなくなっています。

確か、この前に通ったときはちゃんと生えていたはず。

ぴょんは首を傾げながら、あたりを見渡してみました。


すると、あっちの葉もこっちの葉も。

アオキの葉っぱだけが、きれいさっぱり摘み取られています。

木の高さは、ぴょんの背丈の倍以上もあります。

誰かにんげんが摘み取ったのかなぁ、食べたら美味しいのかなぁ。

いろんなことを思いながら、先へと辿ると。



あっ! と思いました。

目の前には、10粒ほどの俵型をした糞があったのです。

ぴょんたち野うさぎのものは丸いお饅頭のようなかたち。


それに比べてこの大きさとかたち。

そう、これはニホンジカの落し物だったのです。

しかもそれはまだ緑色をしており、乾いていません。


シカやウサギなどの糞は、落としてすぐは緑色をしています。

でも、数日経つと茶色く変色します。

だから、糞の色を見たらいつ頃落し物があったか分かるのです。


その糞がたくさん落ちているということは、シカがアオキを食べたということ。

しかも、大勢いたみたい。

つい先日ここを通ったであろうシカさんの群れに思いを馳せながら。

道を先へと進みました。




隣山まではあと少しなのですが、ここからは上り坂。

でも、ぴょんにとっては平気です。

野ウサギたちは、後ろ足のほうが長いから上り坂は得意。

でも逆に、下り坂を駆け下りるのはとっても苦手なのでした。



峠を下ると、やっと野いちごの群生地に入りました。

あたり一面、野いちごが生えています。

やった~!


おうちから離れたここまでがんばって跳ねてきたから、ぴょんのお腹はぺっこぺこ。

やっとのことでありついたご飯に、夢中になりました。


先日に降った雨を吸い込み、いちごの茎はとってもみずみずしくてやわらか。

美味しいご飯にありついて、ぴょんはとっても嬉しい気持ちになりました。

しばらくの間、むしゃむしゃご飯を食べて。

やっとお腹が落ち着きました。



そこでぴょんは、いつもの切り株の上にちょこんと座りました。


そこはここちよい風が吹き抜ける、お気に入りの場所。


さきほどまでは曇り空だったのですが。

ふと見上げるとあたまの上には、木々の間からお月様の光が差し込んでいました。

どうやら、ぴょんがいちごに夢中になっている間に、おそらは晴れたみたい。


月明かりの下、切り株のうえで静かに座っていると。


遠くのほうで、ホー、ホーとフクロウの声が響きました。

それに答えるように、また別のフクロウが鳴き返し。

しーんと静まり返った山の中に、その声だけが響いていました。



冷たい月明かりに照らされ、葉っぱの上できらきら光る夜露。


ぴょんはただ黙ってそれを眺めていました。




たまに、ささーっと辺りを通り抜ける風に吹かれていると。


風が吹いてくる方向から、なんだかいいにおいがするような気がしました。

くんくん。くんくん。

その方向にはなを向けてみると。

ぴょんはこころをくすぐられるような気持ちになりました。


なんだろう、この感じ。

やさしくて、ぬくもりのある。

どことなく懐かしいような。

でも、今まで出会ったことのないにおい。

かすかに香るそのにおいに、ぴょんはたまらない気持ちになりました。



~続く~
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プロフィール

atsutaya

Author:atsutaya




生粋の里山育ち。


*ククリワナ猟でイノシシやシカ。
*魚釣り、時に潜りとジゴク漁。
*貝にワカメにカニに山菜。
*秋はひたすらオオスズメバチ追い。

巡る季節のなか、自然に遊んでもらいながらも真剣に。
そんな日々の暮らしを綴るブログです。

著:(これ、いなかからのお裾分けです。)

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