スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ある朝。

『やす~、大根抜いてきて~!!』


遠くから聞こえる母の言葉。


でも、布団から抜け出せずにもう一眠り。


『やす~!!!』


もう一度掛かる母の言葉。


その声は、先ほどの声とは低さが違う。


そろそろヤバイ。



というより。



その『次』は、ない。





『はーーい!!!』



慌てて、でっかい声で返事をする。


急いで布団をめくって、『ん~』と伸びをして、ちゃんちゃんこを羽織り、玄関へ。


下駄をつっかけ、玄関の戸を開ける。


ガラガラガラ、ピシャン。


うはぁ、寒い。


吐く息も真っ白になるくらい、空気が冷たい朝。


吸い込む空気の冷たさで、肺もきゅんってなる。


どんな眠気も、一発で吹き飛ぶそんな、朝。


玄関前の真紅の椿にも、霜が降りてる。


これじゃ椿も寒いだろうに。



横の縁側の上に無造作に置かれた、柄の折れた包丁を掴む。


カランコロン、カランコロン。


包丁片手に、下駄を鳴らしながら道を歩いて畑へ向かう。


家の前の田んぼにも、真っ白な霜が降りている。


畑に入ると、身体の重みで土が沈んで、足の指がキーンと冷える。


『うはぁ。』




まず、大根の畝(うね)を見渡す。


完璧な真っ直ぐでなく、少しくねくね曲がった畝。


それっくらいが、ちょうどいい。



あんまりピシッと一本筋の通った畝だと、可愛げがない。


さてさて、うまそうな大根を探す。


足元のやつより、向こうのほうがでっかく見える。


そいつを目当てに行くと、さっきのほうがでっかく思える。


あれれ~。


おっかしいなぁ。


こんなのは、いつものこと。


ちょっと離れた場所のやつって、よさげに見えるもんさ。



隣の大根は、葉っぱがでっかく育って立派に見える。


大根さん、ちょっとごめんよ。


ひょいと葉を抱えて下を覗くと、そうでもない。


意外に、細かったりするのだ。


細い大根は、置いておく。


そのままにしておいて、おっきくなったら頂く。


だから、なるべく大きな大根から収穫するのだ。



葉っぱの大きさに惑わされず、根をしっかり見るのが大事。


大きな葉っぱは、大根を覆って霜の被害から守っている。


霜が直接大根に降りたら、水分が凍って大根は腐ってしまうからね。


自然って、すごい。


根元が太いからといって、いいわけじゃない。


二股になっていたりする。


その中で、太くて長そうな一本のやつを見定める。


そして、エイヤッと引き抜く。


かといって、力いっぱい引き抜いたらだめ。


畝の土が崩れて隣の大根が傷んでしまう。


そっと、でもしっかり掴んで抜く。


ずぼっと抜けた瞬間。



これがまた気持ちいいんだなぁ。


それが、太くて長い立派なやつならなおさら嬉しい。


抜いたら、畝に穴が空く。

だから、しっかり土をかけて戻し、埋めなおす。





へっへっへ~~♪


カラランコロロン、カラランコロロン。


なんだか、下駄の音もちょっぴり得意げ。


僕は抜きたての大根を抱えて、母のもとに持って帰る。



両手で抱えた大根を、片手に移し、玄関の戸を開ける。



開口一番。



『おかあさ~ん!採ってきたよ~!すごいでっかいよ~♪』


僕は自慢げに、母に大根を渡す。



その後出てくる朝ごはん。




シャキシャキなんてもんじゃない。


甘みがいっぱい詰まってる。


あま~いあま~い大根サラダ。

味噌汁にも大根が入る。


これがまた、身体があったまってうまいんだな。


食卓に並ぶ、品々の中には大根が使われたものもある。


朝から家族のために役立っているという喜び。


家族それぞれに、大事な役割が、ある。


使う野菜は、その時々に使う分だけ収穫する。


今思えば、一番の贅沢。






僕の小学校時代。



そんなある日の、朝を想ふ。



スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

atsutaya

Author:atsutaya




生粋の里山育ち。


*ククリワナ猟でイノシシやシカ。
*魚釣り、時に潜りとジゴク漁。
*貝にワカメにカニに山菜。
*秋はひたすらオオスズメバチ追い。

巡る季節のなか、自然に遊んでもらいながらも真剣に。
そんな日々の暮らしを綴るブログです。

著:(これ、いなかからのお裾分けです。)

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。